ふすま

今日は襖屋さんに行ってきました。
法然院で描く襖絵用の襖の下地を購入するためです。
ふつうは建具の卸売りの会社は個人には販売してくれないのですが、友人で作家の山本太郎くんに紹介していただきました。彼は保存修復の会社で働いておられて、作品の屏風にも建具材料を使っているので非常に詳しいのです。
会社を訪問して相談したところ、法然院の襖は特別に凝った仕様なようで、標準にはない幅の広さでした。規格サイズに「かまち」という枠ようの木を継ぎ足して作ることにしました。
尺寸なので今のcmに置き換えていただいて計算しました。
合計20枚の襖下地を注文することになります。
今日は予算とも照らし合わせてだいたいのめぼしがついて一安心でした。

その後、しばし担当していただいた方から襖についてのお話を伺う。
最近は和室がある家が少なくなってきて、襖の需要が減っているとの事。
新築のマンションにはほとんど和室はないみたいです。
しかし、襖は日本の気候にとても適しているすぐれた建築仕様で、湿度が高いときは湿気を吸い、乾燥してきたら湿度を放出する役割をしていたそうです。現代建築で結露のひどかった部屋を和紙の襖に変えたら結露がまったく出なくなったとの事。
私の家もマンションで、結露やビニールクロスのカビには悩まされています。以前建築関係の人に相談したところ、これは直しようがないとのことでしたが、昔の日本家屋は、湿度の高い日本の気候に合わせて「呼吸」していたんですね。なんと優れた仕様なんだ!
私は絵画の展示形態として、かつて生活と調和した優れた形が日本にあったという角度から襖絵について考えていますが、自然と一体だった日本人の文化がここにも読み取れますね。襖奥深し・・・。
便利さを追求して今の建築はハウスダストとかいろんな問題が生じているけど、実は昔のやり方が一番日本の気候に合っているというわけ。
こちらの会社では建築と一体となっている豊かな日本文化をもっと現代の人にも知ってもらって広めたいとのことでした。

日本襖振興会HP
http://www.fusuma.gr.jp/

帰り道、車を運転しながら、今回私がRootsでやることは、まさにそういった意味でも社会の中での芸術家の仕事だと強く思いました。
日本の風土の中で育まれた日本文化を見つめなおし、回顧趣味ではなく、現代の文化と新しい形で融合させること。それを世の中の人の心に映る形で、芸術としての強度を持って提示すること…。

ところで、絵画の話をすると、
以前、日展のえらいさん奥田元宋画伯が描いた銀閣寺の障壁画のポスターを見たとき、びっちりハイパーリアルに描き込まれた紅葉の風景画を見て「なんかが違う。」と激しく思ったものです。
東洋建築に、西洋的絵画技法で、油絵に対抗するべく物質感を発達させた東洋伝統画材を使って、東洋人的情緒性を持って山水を描いた現代「日本画」・・・。
近代に成立した「日本画」という絵画のムーブメントは西洋の絵画技法を取り入れて成り立っています。
しかし西洋の風土・空間感覚で生まれたパースペクティブと、東洋の風土で生まれたパースペクティヴとには、本来根本的に意味に違いがあります。
絵画表現は、思想だけでなく風土や建築と連動して発達してきたもので、絵画空間と居住空間とは深く関連していました。
日本人は居住空間と温暖湿潤な自然とが一体になり緩やかな境界線でもって生活してきました。ヨーロッパのような石やレンガ造りの建築は建てる必要が無かったし、日本に建ててもカビだらけになるでしょう。西洋では、自然から身を守る石造りの、構造上窓の少ない家に、窓の空間を作るように絵画を掛けます。そこに描かれるのは人物が主役です。またフレスコ画や油絵など絵画のあり方も、日本には無い激しい乾燥や風土に耐えるために編み出された技法です。日本では呼吸する障子を開ければ愛でるべき自然があり、外光を大きく取り入れながら、襖にもそれと協調する自然空間を描きます。
それは鏡のように空間を作るためのものではなく、抽象化・象徴化されたものです。

思想においても生活空間においても、自然との調和。
造形空間における洗練された抽象性・象徴性・構成力。
これらは日本美術の持つ特質だ。

そういうありかたもいまならまたできるんじゃないかな。

そんなことを考えつつ東福寺の九条から、鴨川沿いの川端通りを上ると、五条までずっと桜が咲いていました。

コメント

この文章すごく良いですね!
今まで読んだ船井さんの文章の中でもぴか一です。
一番共感できます。
Rootsを法然院でやることで船井さんの考えがさらにクリアになってきているように感じます。

ども!ありがとうございました☆
おかげさまでなんとかなりそうよ〜。

こういう話、前にも一緒にしてなかったっけ?
気候風土と建築・絵画技法・宗教の発達の関係は修了論文でも少しやったんですよ。
ほんとに、具体的に実践できる機会を得られてうれしいです。

  • funaimisa
  • 2006/04/04 00:28
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