楽園/境界 作品について2



私の作品にはウサギがよく出てきます。
前にも書きましたが、
私は自分がずっと取り組んできたなかで、「絵画」というものをイマジネーションと現実をつなぐ「穴」のようなものだと思い、穴にたとえています。
それに対して、ウサギは穴のあちらとこちらをつなぐ、いざなう、行ったり来たりする、「境界者」の象徴として描いています。
私の作品のウサギに見えるものは実際は単なる木の板ですが、この形を見ると大体の人はウサギだと言います。
それは、見る人の脳の中で、かつて自分が見たウサギの形の記憶とこの板の形が合わさって、つながった瞬間に板がウサギに見えます。
その瞬間に、ただの板はウサギに変わり、部屋は楽園に変わります。
それが絵画が発生する瞬間で、わたしはその瞬間に興味があります。
今回の作品では、そのウサギの絵に乗る事が出来ます。木馬のようにまたがって子供がゆらゆらゆれます。いずれ大人サイズも作りたいと思っています。
あくまで私は絵の2次元の世界について追求していて、画家であって、立体は苦手です。私は立体は作る事が出来ないと思っています。これは立体作品ではなく平面の絵に乗ると言うことが大事で、木馬の構造を考える時にも彫刻的な形態にならないように、平面性を強調する形にするのに苦労しました。
揺れるウサギの下の楕円の部分は「穴」です。穴にウサギが出たり入ったりしている絵で、子供が乗るとイマジネーションの世界へ出たり入ったりしていると言うことです。
ウサギは、古来から世界各国でいろいろな民話や神話などに登場します。老若男女誰にでも一目で解りやすい形であり、
人々の身近にいて、イメージをたくしやすい存在なのではないかと思います。
白くて、フワフワしていて、ピョンピョン飛んですばしこくはしり、小さいけどそこそこ大きくて、形が特徴的で。
因幡の白兎や、謡曲の竹生島の波兎、月の影をウサギに見立てたり、兎と亀、西洋でもアリスや、西洋では兎はよく増える事から多産や春の豊穣の象徴となり、プレイボーイでは性欲の象徴。琳派や日本画など伝統的な絵画にも繰り返し描かれているモチーフです。日本では波兎から防火のアイコンとして蔵などの建築にも彫刻され、そのフォルムの洗練が繰り替えさて表現されてきました。
そんなことから私の作品の表現したい事柄とあっているのでウサギを用いています。
他にも、今回は単体としてはバク、ヘビ、などの形があります。それぞれ意味があります。
バクは日本の「獏」で中国から来た文化で神獣と言われており、日本で生まれた民間信仰で悪い夢を食べてくれるという言い伝えがあり、豊臣秀吉も獏の形の枕で寝ていたそうです。よくある神社仏閣の鴨居の白い柱飾りは象や獏の形をかたどっています。人々のイマジネーションから産まれた動物のようで、夢と想像力を象徴するようなモチーフとして面白いと思っています。
ヘビも神様の使いと言われたり、楽園のアダムとイブにリンゴをすすめたり、何か人間にいろいろな物を連想させる形態である事は間違いないようで、気になっています。
そして画像の奥に見える紫のもくもくした形ですが、あれは「海馬」です。
海馬とは脳の中にある器官で、人間の記憶などをつかさどると言われています。
タツノオトシゴによく似た形をしているために、海馬と呼ばれています。
記憶をつかさどる海馬の絵の木馬です。
他にも今回は他の形になりましたが、腎臓や胃袋なども作りたいと思っています。
これらの木馬のような形をした絵画作品は、2次元と3次元、記憶と現実、自然と人工、体の中と外が反転するような、そういう物を作って実際に生命の塊である子供が乗っている所を見たいと言う、それで作品として成立する、そういう意味があります。
その他入口に数点、床に置いてあるカラフルな形は、体の中の臓器の絵です。
五臓六腑というタイトルがついています。
楽園が誰も見たことがないのに頭の中だけにある風景なら、腎臓や膵臓や胃袋もまた自分の中にあるのに死ぬまで見る事のない物で、その事にとても興味があります。日々これらの細胞が動いて循環しているために私達は生きているけれど、日常の中で腎臓の事を感じる事はほぼありません。論理や思索や言論だけで生きているような気になっていますが、腎臓がないと死にますね。
絵のモチーフとして、それを取り出して描いてみたいという気になりました。
中央の大きなピンクの山「mountain/motoko」は、それらがすべて合わさったイメージで生命の塊のような形をしています。
森羅万象のうごめく塊というイメージです。楽園を象徴する山です。
その中にもぐりこみたい、なんなら一回死にたい、そしてそこから飛び出る事で、本来の生の感覚を取り戻してもう一度あたらしい明日へ向かいたい。
「楽園/境界」とは、楽園と現実の境界を体感して考える、そういう作品です。
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