乳幼児と展覧会


子供達のパワーはすごいもので、嵐の跡のようで、休館日にメンテナンスをしました。
作品の色を塗り直し、調整していた作品も入れ変えて、少し新しい構成になりました。
毎日たくさんの方にご来場いただいていて、週末の来場者は一日で1700人に達し、平日でも1000人近い来場があるそうで、みなさまどうもありがとうございます。
しかしそれだけ、他にこういった場が無く、子供と美術を楽しむと言うことにニーズがあるのだなと思います。
今回は特に、小学生よりも小さいお子さんとその親御さんを想定して構成されています。小学生になると色々と体験出来る場は多いですが、それまでの乳幼児とアートに触れる場というのはほぼありません。
私自身、子供ができてからここ4年くらい美術展に行けなくなりました。小さい子供はどうしてもつまらなければぐずるし、面白ければさわりたいし、喜ぶと声を出したりしてしまうので、途中でかついで出たり(出されたり)、さわっちゃダメ!声を出すな!動くな!と鬼の形相で子供を怒鳴り続ける事になったり、、、という悲しい経験が積み重なり、行くのは無理だなと。しかし、子供が行ってはけない場所と言うことは子供がいる親も行けないと言うことで、落ち着いて言う事が聞ける小学生になるまで6年くらいはかかりますから、それまで女は子供ができたら美術館に行く事もできないのかと悲しい気持ちになったりしました。美術館だけじゃなく外食とか電車とか図書館とか、今まで普通に暮らしていた中で、非常にたくさん出かけるのが不可能な場所が生じます。昨年、乙武さんがレストランの車いすの件で話題になりましたが、あのときはかなり共感しました。
美術って、、、赤ちゃん連れで見られる美術展があっても良いんじゃないのか? もっと出来ることはあるし、あるべきなんじゃないのかと思うようになりました。世の中一部の大人のルールで動いているけれど、みんな元々は子供だったのに、そういう原始的なものや定形外のものを排除しているけれど、人間の生き方としてそれでいいのかな?と思う事も多くありました。
そんな子育て中の女としてのトラウマもあって、今度は私は絶対に触ってもいい絵画作品を作ってやると思っていたところへ、この展覧会の依頼が来て、今回の作品を作りました。
子供を楽しませるための作品というわけではなく、クオリティは通常の大人向けの美術展と同じで、それを子供のいる人や小さい子もみな他の人と同じように安心して自然体で美術を楽しめる空間にしたかったのです。
もちろん、通常は美術館で作品をさわると言うことは絶対的なタブーで、文化財産の作品を最もベストな状態で保存してアーカイブして共有するというのが美術館の目的ですから、汚れたから塗り直すなんてありえない事ですが、今回は私の部屋だけは特別に塗り直しする事を前提でインスタレーションを作りました。死んだ作家は無理ですが私はまだ生きているので会期中に塗り直しに行きます。そのぶんみんなにこの体験を共有してもらいたいと思います。
また、私の作品はもともと表面がステンレスなので少し触れてしまったくらいなら拭けばきれいになりますし、もともと見る人を作品空間に取り込むというコンセプトで、さらにずっと前から平面性を際立たせるために単色で均一な画面に仕上げる作風なので塗り直しやすく、ちょうど適していたと言えます。鏡のシリーズの前は、即興で壁に描いた絵を会期終了したら消すという作品を作っていましたしね。
それでも、この形に仕上げるまでは本当に大変でした。
通常は美術品は自立していれば展示出来ます。監視の人の声かけを無視して作品によじ登る人なんていませんが、今回はそういうお客さんばかりなので、自立する形態からしてかなり試行錯誤しました。
それでも集団のパワーは想像を絶する勢いで、壊れないかドキドキ、ビックリしていますが。笑  
みなさんお手柔らかに鑑賞してくださいね。あくまで美術作品で、さわってもいい「絵」なので、遊園地ではありません。
守れるルールは守って事故の無いように、壊さないように、作品世界を楽しんでください。
床置きの作品は乗ったり入ったりする事が出来ます。壁面の作品にはお手を触れないように。
とても素敵で、なんだろうこれと赤ちゃんがぺたぺた触ってしまう…そういう素晴らしい体験は、今回は解放してみたいと思います。
ルールの線引きが難しく、監視のスタッフの方や運営の方もいつもと根本的に違って本当に大変だと思いますが、来た人が少しでも楽しめるようにいろいろと工夫して対応してくださっています。
いろいろ難しい事や大変な事もあると思いますが、やはり子供が美術展に来るのは無理だダメだというのではなく、子供も親も運営側も作家も美術展というものの在り方に対して経験を積んでいくことで、これから社会的な広がりや精神的な豊さが生まれるのではないかな。学芸員さんも私も、まずそのはじめの一歩と思っています。
お手柔らかに、温かい目で見守ってください。笑
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